かつて日本の家庭用インターネットを支えてきた「ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)」サービス。 2000年代初頭には高速で安価なインターネット回線として爆発的に普及しました。しかし時代の流れとともに光回線の普及が進み、2020年代に入ると大手事業者によるADSLの提供終了が次々と発表されました。 この記事では、ADSL終了の背景や理由、そして今後のインターネット選びについて、ご紹介します。


ADSLとは?かつての主流だったインターネット回線

ADSLとは、「非対称デジタル加入者線(Asymmetric Digital Subscriber Line)」の略で、既存の電話回線を使ってデータ通信を行う技術です。 最大の特徴は、電話回線を使いながら同時にインターネット接続ができるという点でした。 ISDN時代には通話中にインターネットが使えないという制約がありましたが、ADSLの登場によって常時接続が実現し、家庭のインターネット利用が一気に広まりました。

登場当初の下り通信速度は1.5Mbps前後でしたが、技術の進歩によって8Mbps、12Mbps、24Mbps、さらには50Mbpsなど高速化が進行。 2000年代半ばには、NTTやYahoo! BB、イー・アクセス(のちのソフトバンク)が提供するADSLが一般家庭の主流回線となりました。


ADSL終了の背景と理由

1. 光回線の普及による役割の終焉

ADSLが普及した当時は、光ファイバー網がまだ都市部中心で、地方ではインターネット環境が整っていませんでした。 しかし2000年代後半から「フレッツ光」や「auひかり」、さらに「NURO光」などの光回線が全国的に整備され、通信速度が数百Mbps~1Gbpsを超える時代に突入しました。

光回線は、ADSLと異なりノイズの影響を受けにくく、通信が安定しています。その結果、ADSLの「距離による速度低下」や「品質の不安定さ」といった弱点が際立ち、利用者が年々減少していきました。

2. 回線設備の老朽化と維持コスト

ADSLは、電話回線のメタルケーブル(銅線)を利用していました。しかしこのメタル回線自体が老朽化しており、保守・点検コストが高騰しています。 また、通信事業者にとってはADSL専用の設備を維持するコストに対して、利用者数が急減しているため、事業として採算が合わなくなってきました。

3. NTTによる「メタル回線撤去」方針

NTT東日本とNTT西日本は、2030年代に向けて段階的にメタル回線の撤去を進める方針を打ち出しています。 この方針の一環として、固定電話サービスも「IP電話化(光回線経由の通話)」へ移行が進められており、ADSLもその対象に含まれています。

つまり、ADSLは単に人気がなくなったから終了するのではなく、通信インフラ全体の転換期にあるのです。


主要事業者によるADSL終了スケジュール

最も大きな影響を与えたのは、NTT東日本・西日本による「フレッツ・ADSL」の終了です。

  • NTT東日本:2026年1月31日をもってサービス終了
  • NTT西日本:2026年1月31日をもってサービス終了

また、ソフトバンクが提供していた「Yahoo! BB ADSL」も2024年3月末に終了しました。 これにより、日本国内の大手ADSLサービスはほぼすべて終了となり、2025年時点では一部の地域事業者を除き、ADSLを利用することは実質的に不可能となっています。


ADSL終了による影響

1. 光回線が引けない地域のインターネット難民化

都市部ではすでに光回線が当たり前ですが、地方や山間部では光ケーブルの敷設が遅れている地域もあります。 ADSLは電話回線を使うため、光が通っていない地域でも利用できたという強みがありました。

そのため、ADSL終了後に代替手段が見つからない利用者は「ネット難民」状態になる可能性があり、特に高齢者や中山間地域では社会問題として取り上げられています。

2. 企業や店舗への影響

一部の中小企業や店舗では、POSレジや監視カメラの通信などにADSLを利用していたケースもあります。 これらも光回線やLTEルーターなどへの移行が必要となり、初期費用や工事が負担になることがあります。

3. 固定電話との関係

ADSLは固定電話と共用する仕組みだったため、ADSL終了に伴い電話回線の契約内容が変わるケースもあります。 多くの利用者は「光電話(IP電話)」への移行を迫られており、今後はすべての固定電話がIP化される方向です。


ADSLの代替となる主なインターネット回線

ADSL終了後も、インターネットを使う手段は複数あります。ここでは代表的な選択肢を紹介します。

1. 光回線(フレッツ光、auひかり、NURO光など)

最も安定して高速な通信ができるのが光回線です。通信速度は最大1Gbpsが主流で、動画視聴・オンラインゲーム・テレワークなど、あらゆる用途に対応できます。

NTT系の「フレッツ光」や、プロバイダ一体型の「ドコモ光」「ソフトバンク光」など、多くの選択肢があり、キャンペーンも充実しています。

2. モバイル回線(5Gホームルーター)

光回線が引けない地域では、「ホームルーター」が注目されています。 代表的なものに「SoftBank Air」「ドコモ home 5G」「UQ WiMAX」などがあります。 コンセントに挿すだけで使える手軽さが特徴で、ADSLの代替として利用するケースも増えています。

3. 衛星インターネット(Starlinkなど)

山間部や離島など、光もモバイルも届かない地域では、衛星インターネットが新しい選択肢となっています。 特にSpaceXの「Starlink」は高速・低遅延で、すでに日本でも提供が始まっています。設置も容易で、電源と空が見える場所があれば利用可能です。

4. ケーブルテレビ(CATV)回線

地域によっては、ケーブルテレビ会社が提供するインターネットサービスも利用可能です。 通信速度は光回線に劣る場合もありますが、テレビとセットで契約できるためコスト面でメリットがあります。


ADSLからの乗り換え手順

ADSL終了に伴い、新しい回線へ移行する際は次のステップを踏むとスムーズです。

  1. 利用中のADSL契約内容を確認
    終了予定日や解約手続きの方法、同時解約になる電話回線の有無を調べましょう。
  2. 新しい回線を選定
    光が引ける場合は光回線へ、難しい場合はホームルーターやStarlinkなどを検討します。
  3. 回線工事・開通手続き
    光回線の場合、工事日程が数週間かかることがあります。ADSL終了前に余裕を持って申し込みましょう。
  4. ADSLの解約
    新回線が開通してからADSLを解約することで、インターネットの空白期間を防げます。

ADSL終了は時代の転換点

ADSLは、日本のブロードバンド時代を切り開いた重要な技術でした。 2000年代初頭、1Mbpsの速度でも「常時接続」が革命的だった時代を支え、多くの家庭が初めてインターネットに触れるきっかけを作りました。

そのADSLが姿を消すのは、インターネットの進化を象徴する出来事でもあります。 今や私たちはスマートフォンで常時高速通信を行い、4K動画やクラウドゲームを楽しむ時代です。 ADSLはその礎を築いた存在として、技術史の中で確かな足跡を残しました。


まとめ:ADSL終了後も安心してネット環境を整えるために

  • ADSLは2023~2024年に主要サービスの新規提供が終了
  • 終了理由は光回線普及・設備老朽化・NTTのメタル撤去方針
  • 代替手段として光回線・ホームルーター・Starlinkなどがある
  • 乗り換えは早めの準備が重要

ADSLの終了は、過去のインフラから次世代通信への移行を意味します。 今後は光回線や5G、衛星通信など、多様なネットワークが共存する時代です。 自分の利用環境に合った通信手段を選び、快適なインターネット生活を続けていきましょう。

By ぱんだ

白黒うさぎを飼っている30代の独身男のぱんだです。 通信携帯業界に約10年以上携わったガジェット好き。 今後、通信系の経歴を活かし、情報発信やうさぎ、自分の趣味も数多くあり新しいお得な情報を分かりやすくお届けします。

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