スマートフォンやタブレットの普及により、今や外出時の必需品となっている「モバイルバッテリー」。
しかし、ニュースなどで「モバイルバッテリーが発火」「破裂してケガ人が出た」といった事故を耳にすることがあります。
なぜこのような危険な事故が起きるのでしょうか。この記事では、モバイルバッテリーが破裂・発火する主な理由と、その防止方法について詳しく解説します。
モバイルバッテリーの基本構造を理解しよう
まずは、モバイルバッテリーの内部構造を簡単に理解しておきましょう。
モバイルバッテリーの中心には、リチウムイオン電池またはリチウムポリマー電池が使用されています。これらは高いエネルギー密度を持ち、小型でも大容量の電力を蓄えられるのが特徴です。
しかし一方で、これらの電池は熱や衝撃、過充電に弱く、扱いを誤ると化学反応が暴走して発火・破裂を引き起こすリスクがあります。
つまり、便利である反面「非常に繊細」な構造なのです。
モバイルバッテリーが破裂・発火する主な原因
では、具体的にどのような要因が破裂を引き起こすのでしょうか。以下のような原因が挙げられます。
1. 【過充電】充電しすぎによる内部圧力の上昇
モバイルバッテリーを長時間充電し続けると、内部のリチウムイオンが過剰に蓄積され、「過充電」状態になります。
この状態では内部の電解液が化学反応を起こし、ガスが発生して電池が膨張します。
そのまま放置すると、外装ケースが耐えきれず破裂したり、内部でショートして発火する危険があります。
近年の製品は「過充電防止機能」が搭載されていることが多いですが、安価なノーブランド製品や粗悪な模倣品では安全回路がないこともあり、特に注意が必要です。
2. 【高温環境】夏場の車内や直射日光下での使用
モバイルバッテリーが破裂する事故の多くは、高温環境での使用や放置が原因です。
リチウムイオン電池は約45℃を超えると化学的に不安定になり、**熱暴走（サーマルランナウェイ）**という現象が発生します。
これは内部温度が上昇し続け、最終的に発火・爆発を起こす非常に危険な状態です。
特に夏場の車内は60℃を超えることもあり、モバイルバッテリーを置きっぱなしにすると一気に危険度が高まります。
3. 【物理的な衝撃】落下や圧力による内部損傷
モバイルバッテリーを落としたり、バッグの中で他の荷物に押し潰されたりすることで、内部セルが変形・損傷することがあります。
内部のセパレーター（絶縁膜）が破れ、正極と負極が直接接触してショートを起こすと、一気に高熱が発生し破裂する恐れがあります。
特に、薄型・軽量モデルは内部の構造が繊細なため、落下や衝撃に弱い傾向があります。
4. 【不適切なケーブル・充電器の使用】
純正以外のケーブルやACアダプターを使用することも、破裂のリスクを高める要因です。
出力が高すぎる充電器を使用すると、モバイルバッテリーの許容電流を超えてしまい、内部が過熱する可能性があります。
また、100円ショップなどの安価なケーブルでは、電流制御が甘くショートを引き起こす例もあります。
5. 【水濡れ・湿気】
モバイルバッテリーは基本的に防水構造ではありません。
水分が内部に侵入すると、電解液と反応してガスや熱を発生させることがあります。
さらに、ショートや腐食を引き起こし、破裂の原因となることもあります。
破裂の前兆サインを見逃さない
モバイルバッテリーは、破裂の前にいくつかの“警告サイン”を出すことがあります。
次のような症状が見られたら、すぐに使用を中止しましょう。
- 本体が膨張している
- 充電中に異常な発熱を感じる
- 甘い焦げ臭いにおいがする
- 充電がすぐ切れる／異常に長時間かかる
- 内部から異音がする
このような場合は、絶対に針や工具で穴を開けたり、押しつぶしたりしてはいけません。
安全に自治体の指示に従って処分する必要があります。
安全に使うための5つの対策
破裂や発火を防ぐためには、日常的な使い方を見直すことが重要です。
以下の5つのポイントを守りましょう。
1. 信頼できるメーカー製を選ぶ
一番の基本は、**PSEマーク（電気用品安全法適合）**のある正規品を購入することです。
無名ブランドや海外の格安品の中には、安全回路が省略されているものもあります。
Anker、ELECOM、RAVPower、Belkinなど、信頼性の高いメーカー製を選びましょう。
2. 高温・多湿の環境を避ける
直射日光の当たる場所や車内など、高温になる環境に放置しないようにしましょう。
また、浴室など湿気の多い場所でも使用を避けることが望ましいです。
3. 落下や圧迫に注意する
バッグの底に無造作に入れず、専用ポーチやケースに収納することで物理的なダメージを防げます。
特に飛行機搭乗時など、持ち運びの際は手荷物に入れることが義務付けられています。
4. 適切なケーブル・充電器を使う
メーカー純正、または認証取得済み（MFi認証など）のケーブルを使用しましょう。
急速充電器を使う場合も、対応出力を確認して規格に合った組み合わせで使用することが重要です。
5. 長期間使わないときは半分ほど充電して保管
フル充電や完全放電のまま長期間放置すると、電池に負担がかかり劣化が進みます。
40～60％程度の充電残量で涼しい場所に保管するのが理想的です。
モバイルバッテリーが膨張したらどうする？
もしすでに膨張している場合は、すぐに使用を中止し、処分を検討しましょう。
多くの自治体では、モバイルバッテリーは「小型充電式電池リサイクル協力店」などで回収を行っています。
燃えるゴミや不燃ゴミとして捨てるのは絶対にNGです。
まとめ：便利なモバイルバッテリーこそ「安全第一」で使おう
モバイルバッテリーは、現代のモバイルライフに欠かせない存在です。
しかし、扱いを誤ると「破裂」「発火」という重大事故につながるリスクがあります。
- 過充電を避ける
- 高温環境に置かない
- 衝撃や水濡れに注意する
- 安全基準を満たした製品を選ぶ
この4つを意識するだけでも、事故のリスクを大幅に減らせます。
もし違和感を感じたら「もったいない」と思わずに使用を中止し、適切に処分することが安全です。
便利さと安全性のバランスを取りながら、安心してモバイルバッテリーを活用していきましょう。
